アナログ伝送の秘密

         世の中がデジタル化すればするほどするほど見直される

         素直な特性となじみの良さ

 

                株式会社 スタジオ イクイプメント

北 康雄

 

 世の中コンピュータ化が進み、デジタル=先進&高性能 アナログ=前近代的&低性能と世間一般では思われがちである。もちろんプロの世界で活躍されておられる読者の皆様にはそんな短絡的な考え方をされる方はいないと思います。すべての分野がデジタル化して行く中で、録音の分野がデジタル化に抵抗している様にも思えます。
 音声信号を記憶したり、遅らせたり、加工したり、順序を変えたり、編集したりする事に関して、デジタルによる信号処理はアナログ信号のまま処理するより合理的で、スピーディに行うことができます。ところが信号の伝達となると、フォーマットの不統一とデジタル方式の長所でもある厳密性が災いして、アナログ方式がスピーディさと確実さではまさっています。このアナログ方式の音声電送(シールド線による従来の方法)が実は音質面でもデジタル方式より優れているのは皆様ご承知かとおもいます。二芯シールドケーブルによるバランス電送の場合、100kHzぐらい迄をフラットに送るのなど朝飯前です。 これをデジタルに置き換えるには200kHz以上のサンプリング周波数が必要となってしまいます。将来的にはデジタルの弱点も克服されることになるでしょうが、現在のところは情報量と互換性についてはアナログ伝送の方が有利なようです。
 前置きが随分長くなってしまいましたが、温故知新とも申します、一見古いテクノロジーの様に見えるアナログ伝送方式の中にも、私達が見落としていた何かが潜んでいるかもしれません。

 

アナログ伝送は電気によるエネルギーの伝達である。

 私達が普段、音楽を楽しんで聴いているとき、電気エネルギーなど全く意識しませんが、音響機器から音響機器へ信号が伝達されるときは必ず、送り側の機器から受け側の機器へ電気エネルギーが伝えられています。もちろんエネルギーの量としては非常に少ないのですが。ただし音響機器の中でも動作するのに大きな電気エネルギーを必要とする機器があります。それはお察しのとうりスピーカーシステムです。    

電気エネルギーを送るには電線が2本必要である。

 電気エネルギー(電力)を送るには往復2本の電線が必要です。電気の性質をあらわすのに電圧、電流という単位を使いますが、電圧は電気エネルギーを発生させる可能性をあらわしています。ただしそれだけでは何の役にも立ちません。乾電池が机の上においてあってもそれだけでは役に立たず、電池に電球やモーターを接続することによって電池から電流が流れてようやく役にたつのです。このとき電球やモーターへ行く線と電球やモーターから帰ってくる線の2本の電線が必要です。このように存在している電圧から電流を取り出すには負荷(この場合は電球や、電池)をつないで回路を閉回路にしてやる必要があります。負荷(ロード)とは文字どうり荷を背負わせる事で電気的に仕事をする機器を現しています。

 

帰り線も大切

 自動車やオートバイの配線でバッテリーから電球やカーラジオへ行く線が、プラス側の1本だけでマイナス側の配線が省略されている場合があります。その場合負荷からの帰りの電流ルートはボディを流れることになります。雨ざらしにされやすいバイクの場合、錆のため部品のつなぎ目で電流が流れなくなるトラブルが多かったため、現在はバイクのボディに電流を流さず帰り線に電流を流す様になっています。自動車の場合、カーステレオからエンジンの回転数に比例したノイズが出る場合があります。これはカーステレオ電源の帰り線と点火コイルからの帰り線がボディで共通となり、カーステレオの電源にパルス状のノイズが進入するために発生します。このような場合はノイズフィルターをカーステレオの電源に入れても効果はなく、カーステレオの電源のマイナス線をバッテリーから直接引いてくると一発でノイズは解消します。このように電気エネルギーを送るのには電線が2本必要で、特に帰り線にも気を遣ってやる必要があります。

 

電池の内部抵抗と出力抵抗

 電源に負荷を接続して電流を取り出して負荷に仕事をさせる場合。電源の性格によって電圧の落ち方が変わってきます。いかなる電池も電源も変な細工をしない限り、電流を取り出すと多かれ少なかれ電圧は下がります。古い電池をテスターの電圧レンジでチェックすると、さほど電圧が下がっていないのにおもちゃのモーターを廻させようとするとからっきし動かないということがあります。これはテスターの場合は取り出す電流が非常に微小なのですが、モーターの場合取り出す電流が大変大きいため電池の電圧が下がってしまうためです。電池の場合、電池の降下電圧は取り出す電流に比例します。
 これは丁度いくら電流を取り出しても絶対に電圧が下がらない理想電池(実際には存在しない)に直列に抵抗を入れた状態と置き換えて考えることができます。
 電池が新しく元気一杯のときはこの直列の抵抗の値が小さく、したがって多少多くの電流を取り出しても抵抗で降下する電圧は小さいため、電池の電圧はさほど低下しません。古くなると直列抵抗の値が増大して少し電流を取り出しても電圧降下は大きくなり電池の電圧は下がってしまいます。しかしテスターの電圧レンジのように取り出す電流が微小の場合は電圧降下も小さくなります。そのため電池をテスターで測定すると、古い電池も使える様に見えます。電池の場合、内部で発生している電圧を電池の起電力と呼び、直列に入っている抵抗を内部抵抗と呼んでいます。
 音声信号の出力回路を電池に見立てると内部に発生している交流電圧(いくら電流を取り出しても電圧が下がらない交流電源)に直列に抵抗(出力抵抗)が接続されている回路と考えることができます。いくら電流を取り出しても電圧が下がらない電源は現実的には存在しませんが電気の現象を考える場合、このようにシンプルな回路に置き換えるとより理解しやすくなります。つまりあらゆる電源は多かれ少なかれ出力抵抗が存在し、そのため電流を少しでも取り出すと出力抵抗による電圧降下のため出力電圧は低下する。その様な現象を考えるためこの世にない出力抵抗がゼロの理想電源を考えるのです。このような回路を等価回路と呼んでいます。

 

不確定性理論と出力抵抗

 物理の先生が不確定性理論なるものを教えてくれたのだが、その理論は「いかなる物理現象も、その真の姿を測定できない」というものです。つまり回路の電圧を測定しようとして、電圧計を接続するとそれだけで電圧が下がってしまう。また風呂の湯の温度を計ろうとして、温度計を入れるとそれだけで風呂の湯の温度が下がってしまう。ストロボ写真を使って落下するピンポン玉の速度を測定しようとすると、光子がピンポン玉に衝突してピンポン玉の速度が変わってしまう。「すべての現象は女の子のように、観察されるだけで変わってしまい、真の姿はつかめない」という哲学的な理論でした。
 電気音響の世界も良く似たもので、マイクロフォンにしろテープレコーダーにしろ何らかの負荷を接続すると電圧が下がります。ただし出力抵抗の違いにより下がりかたに差が出ます。出力抵抗はテープレコーダーやミキシングコンソールで30から100Ω、マイクロフォンで多いのは150Ωから200Ωぐらいです。ところで出力インピーダンスという言葉もよく使われています。この言葉も出力抵抗と同じ意味を現していますが、音響機器の場合、扱う信号が交流なので抵抗ではなくてインピーダンスという表現をしています。出力抵抗や出力インピーダンスが低いほど大きい電流を取り出しても下がる電圧が小さく、出力抵抗や出力インピーダンスが大きいほど少しの電流を取り出しても電圧が下がってしまいます。また取り出す電流が大きい場合、負荷が大きい(重い)と言い、取り出す電流が小さいほど負荷が小さい(軽い)と言います。
 電気技術屋のあいだでは「少ない仕事を与えている(負荷が軽い)ときにはスピーディに働いているのだが、大量の仕事を与えると(負荷が重い)と不平不満の連発で極端に能率が落ちる人をハイインピーな奴と呼び、仕事が少なく(負荷が軽い)ても仕事が大量(負荷が重い)でもスピードは早くはないが、文句も言わず黙々と働く人をローインピーな奴と呼びます。

トランスとインピーダンスマッチング

 トランスは交流電圧を上げたり、下げたりする事ができますが、それではマイクラインに高性能なトランスを接続して電圧を上げるとスピーカーを鳴らせる事ができるでしょうか?もちろんそれは不可能です。例えば出力インピーダンス100オームで無負荷時の出力電圧が10mVのマイクロフォンを巻線比1:100のトランスで電圧を昇圧させると、確かに二次側の電圧は1Vになりますが、それはあくまで二次側にないも接続しない状態のときの話しです。トランスの二次側から見た出力インピーダンスは巻線比の二乗になるための1MΩ(1,000,000Ω)となり、超ハイインピー出力マイクとなります。これを入力インピーダンス10Ωのスピーカーに接続して負荷をかけるとオープン時1Vの電圧は0.99mVの電圧に下がってしまいます。これではスピーカは鳴りません。(トランスのインピーダンスの比が巻線比の二乗になるのは、トランスの一次側で消費される電力と二次側で消費される電力が等しい事から簡単に導き出す事ができます)トランスで電圧を変化させるとインピーダンスも変わってしまいます。またインピーダンスを変換する事ができますが電圧も変化してしまいます。しかしトランスのこのような性質を利用して、電圧が低くなっても良いから低い出力インピーダンスが欲しいときや、受けのインピーダンスが高くなっても良いから電圧を上げてS/N比を稼ぎたい時などに利用します。
 トランスをギヤにたとえる事ができます。大きなギヤで小さなギヤを廻し、回転を上げてやると回転数(電圧)は上がるがトルク(電流)は下がってしまいます。結局ギアの前段でも後段でも馬力=回転数xトルク(電力=電圧x電流)は変わりません。
 さてスタジオの音響機器の場合、受けのインピーダンスを出力インピーダンスの数倍から数十倍で受けるロー送りハイ受けのインピーダンスマッチングを行っています。このような余裕のあるマッチングが行えるようになったのはトランジスターやIC技術の進化により、ローインピ−ダンス出力が容易に手に入るようになったからです。真空管の時代には受けのインピーダンスは、出力インピーダンスと同じか大きくとも数倍どまりでした。

 

出力インピーダンスと静電誘導ノイズ

 プラス同士及びマイナス同士の電荷は反発しあい。逆の極性の電荷は反発しあいます。そのためある極性に帯電した物質を他の物質に近づけると、近づけられた物質の表面に逆の極性の電荷が引き付けられて集まってきます。この現象を静電誘導と呼びます。
 アンプの入力のホット側に手を触れるとスピーカーからブーンというハムノイズが聞こえてきます。これは電灯線のAC100Vが人の体に静電誘導して電圧を発生させ、その電圧がアンプに入力されてスピカーからハムノイズとなって聞こえるのです。もちろん人の体の変わりに2m位の電線をホット側だけに接続しても同様です。ただしこの静電誘導ノイズは出力インピーダンスが高く(数10MΩから数100MΩ)、前段に100Ω以下の出力インピーダンスの機器を接続すると、シールド線を使わなくてもノイズは聞こえません。これは静電誘導した高いインピーダンスのノイズ電圧が低いインピーダンスの出力抵抗でショートされてしまうからです。この性質を利用してミキシングコンソールの内部配線にマイクラインを除いてシールド線を使わずにフラットケーブルを利用して配線しているミキシングコンソールもあります。
 スピーカー回路のようにアンプの出力インピーダンス0.1Ω以下、スピーカーのインピーダンス8Ωなんて場合は絶対に静電誘導ノイズは発生しません。だからスピーカーケーブルにシールド線を使う必要がないのです。スピーカーケーブルにわざとシールド線を用いる場合がありますが、それはシールド線を使用すると、太い導体の割りに仕上がり外径が細くなるメリットがあるからで、静電誘導ノイズを防ぐためではありません。

 

静電誘導ノイズをシャットアウトする静電シールド

 「マイクケーブルにはシールド線を使うが、スピーカーケーブルにはシールド線を使わないのはスピーカーラインのインピーダンスが低いからだ」ということが解ったが、では「どうしてマイクラインにシールド線を使うのか?マイクの出力インピーダンスが充分低ければスピーカーの様にノイズを受けないのでは?」という疑問が頭をもたげてきます。マイクのインピーダンスを下げると、トランスのところで話したように出力電圧は下がります、 ノイズが聞こえるかどうかはシグナルレベルに対して、どれだけのノイズレベルであるかの相対的な関係となります。だからノイズレベルが低くてもシグナルレベルが低ければ、ノイズが目立って問題になってしまいます。この頃150Ωから200Ω位の出力インピーダンスのマイクが多いのは、出力電圧と出力インピーダンスとの兼合いが丁度良いからなのでしょう。
 さて出力インピーダンスを下げるのにも制約があるとなったら、どのような方法で静電誘導ノイズを防ぐか。それは静電シールドです。音声信号を伝達する信号線と、静電誘導を発生させる原因側の導体の間に金属板を設けて、金属板と音声入力のコモン側(0V側)を電線で接続します。そうすると金属板の電位は、音声入力端子の0Vの電圧となります。金属板が0Vなので音声信号線(シグナルライン)には金属板からの静電誘導は発声しません。結果的に静電誘導ノイズ源からの静電誘導を防いでいます。
 映画「スターウォーズ ジェダイの復習」の中で、共和国側の攻撃を防ぐため要塞衛星「デススター」が「エネルギーシールド」されていて、その「シールド」を解除するため共和国側の精鋭部隊が発電所を攻撃する、というストーリーがありました。「シールド」という言葉の感覚をつかむのには良いストーリーだと思います。
 話しを本題に戻しましょう。この静電シールドですが、誘導側と被誘導側の間に1枚入れるだけで充分で何枚入れても効果は変わりません。静電シールド板を筒上にして編み線などでやわらかく作り、中に信号線を入れたものがシールド線です。 シールドの中に、信号線を行き線と帰り線の2本入れたものが2芯シールド。同じくシールドの中に信号線を行き線の1本だけ入れたものが単芯シールドです。単芯シールドの場合 「信号の帰り線はどうなったのだ?」と思われますが、この場合信号の帰り線はシールドと兼用となっています。

 

電磁誘導ノイズとツイステッドペアケーブル

 マイクケーブルやラインケーブルにノイズが混入したとき、静電ノイズかと思って出力側のインピーダンスを低くしたり、出力側の端子をはずしてショート(出力インピーダンス0Ω)したりしても、かえってノイズが増える場合があります。これは静電誘導ノイズを受けているのではなくて、電磁誘導ノイズを受けているために起きている現象です。
 電磁誘導は、磁束が電線を横切ると電流が発生する現象(フレミングの右手の法則)によって発生します。オーディオケーブルをトランスや電源の近くを通すときによく発生します。この場合、磁束は静電シールドを突き抜けてくるのでシールド線でもノイズが発生します。これを防ぐためツイステッドペアケーブルのテクニックが使われています。
 行き線と帰り線が、2本平行して走っているとき、磁束が横切ると2本の電線に電流が発生しますがその方向は2本とも同じ向きに発生します。例えば行き線も帰り線も前段から次段の方向へノイズ電流が発生したとすると、アンプの入力部分で電流が打ち消し合ってしまいます。チェーンでギアを廻している装置で、送り側のチェーンと帰り側のチェーンを同時に引っ張ってもギアは決して廻りません。ところが引っ張る力のバランスが少しでも崩れるとギアは廻り始めます。送り側の電線と帰り側の電線が密着して走っている場合は良いのですが、離れていると発生する電流のバランスが崩れてしまいます。このため「信号線の送り線と帰り線は同じ経路を密着して配線する」のがすべての電気通信の分野において大原則となっています。
 発生する電流のバランスを最良にするにはどうすれば良いか? それは行き線と帰り線を交互に磁束の強い側になるように配線すれば良いのです。つまり行き線と帰り線を互いによじってやれば良いのです。そうすれば発生するノイズ電流が等しくなってきれいに打ち消し合います。これがツイステッドペアケーブルです。2芯シールド線の中の2本の導体もツイステッドペア構造になっています。
 電磁誘導ノイズは発生するノイズが電流であるためノイズのパワーが強く(インピーダンスが低く)、静電ノイズほどちょろくはありません。これを受けてしまったらノイズ源のトランスや電源部から音声ケーブルを離すしか方法はありません。ケーブルを代えたぐらいでは治まりません。しかしよく調べると音声ケーブルが、無造作にトランスの横を通っていたりするのを発見します。その様な場合ケーブルをトランスからちょっと遠ざけるだけでノイズはおさまります。まさに距離の二乗に反比例です。

 

バランス回路とアンバランス回路

 単芯シールド線ははシールドと信号の帰り線が兼用されていると述べましたが、シールドがオーディオコモンに接続されているため、結局機器のケースにつながってしまいます。その様な場合、信号の行き線はシールド線の内部の導体をちゃんと流れますが、信号の帰り線はシールドにも流れますが、ケースやラックを通じて他のルートにも分流して流れます。この分流して流れる部分に、他の機器の電源からの漏洩電流や他の機器の信号の帰り線からの信号が混入して、ノイズやクロストークが発生することがあります。 また分流して流れる帰り線のルートと行き線のルートが離れているため、磁束の打ち消し効果が少なくなってしまいます。そこでシールドと信号の帰り線をちゃんと分けて、行き線と帰り線がシールド内の同一ルーとを取れるようにしたのがバランス回路です。バランス出力回路は昔はトランスを使って構成していましたが現在は、ホット側の正相アンプとコールド側の逆送アンプを使用して構成しています。
 初期の回路はアンバランス回路に接続してコールド側をショートすると、レベルが6dB下がるとともに音が歪んだ挙げ句、そこらじゅうの回路にクロストークが飛び込むといった問題がありました。現在は新しい回路技術によりすべて解決しているようです。
 バランス入力回路も昔はトランスを使って構成していましたが、現在はほとんど電子バランス入力回路になっています。電子バランス入力回路のほうは当初から何の問題もなく使用されています。

 

シールド線の静電容量と周波数特性

 コンデンサーは直流は通さないが交流は通します。しかも周波数が高くなればなるほどよく電気を通します。またコンデンサーの静電容量が大きくなればなるほど交流信号をよく通します。抵抗の場合電気の通しやすさ(抵抗値の逆数)は周波数の値にかかわらず一定ですがコンデンサーの場合は周波数によって変化します。そのため交流回路の場合、抵抗成分を表す単位は直流回路と同じΩを用いますが、名称はインピーダンスと呼びます。この言葉が電気理論のの理解を妨げる元凶となっています。
 負荷(次段の入力抵抗)によって出力電圧が低下することは、既に説明しましたがシールド線の静電容量も周波数が高くなってくると負荷となり、信号レベルを低下させます。この場合も出力インピーダンスが高くなればなるほどハイ落ちする度合が大きくなります。出力インピーダンスが倍になると高域のカットオフ周波数(3dB下がる周波数)は1/2になってしまいます。これはあまり知られていませんが音質面を管理する上で非常に重要なポイントです。
 ミキサー等で、あるボリュームやフェーダーをを最大状態で使うとハイエンド迄伸びて音のキレが良くなり、そのボリュームを中間状態で使うとハイエンドが足らなくなる場合があります。これは高抵抗のボリュームが中間状態だと出力インピーダンスが大幅に上昇するためにおきる現象です。ボリュームの前段の出力インピーダンスが100Ω、ボリュームの抵抗値が100kΩの場合、ボリュームが最大値の時、ボリュームの出力インピーダンスはほぼ100Ωですが、最大からわずか10%抵抗値を下げた時のボリュームの出力インピーダンスは9.1kΩで、何と91倍のインピーダンスに跳ね上がってしまいます。そのため音響システムやミキシングコンソールの場合、高抵抗のボリュームやフェーダーやからのケーブルはあまり長くならないように設計しています。もしフェーダーの後のケーブルを長く伸ばす必要がある場合は、インピーダンス変換アンプを使用してローインピーダンス出力に変換しなければなりません。
 ケーブルの静電容量は距離に単純に比例します。したがって距離が2倍に増えると静電容量が2倍になり、カットオフ周波数は1/2に下がってしまいます。 このように周波数特性はケーブルの静電容量と出力インピーダンスで大幅に変わってきます。
 シールド線で50kHz以上迄フラットに伝送できるケーブルの長さと出力インピーダンスのーダンスの大まかな目安は、100kΩ以上の出力インピーダンスであれば機器内部の配線のみ、5kΩぐらいまでならコンソール内部の配線まで、1kΩ以内ならとなりの部屋迄、150Ω以内なら巨大な建築物内部でも可能と考えてよいでしょう。逆に150Ω以下の出力インピーダンスの場合、距離が短いと200kHz位までの伝送は楽々行うことができます。

 

あとがき

 アナログ伝送は長年に渡って世界中に人々により発明され、使用され、改良されて来た熟成した技術です。しかもまだ発展する余地もあります。また原理が理解しやすく、機器の接続の親和性にすぐれています。デジタル伝送方式でシステムを組むと、注意しなければならないポイントがあまりにも多すぎて、改めてアナログの良さを認識することがあります。アナログ伝送はデジタル伝送に比べて、オートフォーマット変換機能、オートサンプリング周波数変換機能、オートシンク機能、オートディレイタイム補正機能などが付属しているように思えてしまいます。実際には何の機能もないのですが。

 

1 電池の等価回路

Rsは電池の内部抵抗(出力抵抗と同じ)、 Rlは負荷抵抗、 RlRsでないと負荷を接続した時、電池の出力電圧が下がってしまう。

 

2 アナログ伝送回路の等価回路

等価回路のeは出力抵抗が0Ωの理想電源を表す。

 

図3 バランス回路の場合の等価回路

バランス回路の場合は出力抵抗を二つに分けて考える事ができる。結局、図2と等価であるのでバランス回路でも、図2の等価回路で考えることができる。

 

図4 トランス回路

トランスの1次側で消費される電力は e1の2乗/Z1、負荷Z2でで消費される電力はe2の2乗/z2 となりトランスにロスがなければそれぞれの電力は等しい、トランスの巻線比をnとすると e2=n*e1、これを代入すると、e1の2乗/Z1=(n*e1)の2乗/Z2 となり Z2=nの2乗*Z1となる

 

つまり、トランスでn倍に電圧を上げてやるとn2乗倍の非常に軽い負荷しかドライブできなくなる。

同様に出力インピーダンスもn2乗倍になる。

 

図5 信号源から見ると負荷Rlとノイズ源インピーダンスRnsが並列となって負荷になっている。一方ノイズ源から見ると、出力インピーダンスRsと負荷インピーダンスRlが並列となって負荷になっている。Rnsが非常に大きいためRsでショートされてしまって静電誘導ノイズは可聴値以下となる。

 

図6 ツイストペアケーブル

ケーブルをよじると、ホット側とコールド側に発生するノイズ電流の総和のバランスが取れるため、打ち消し効果が向上する。

戻る

ホームページに戻る